加齢黄斑変性に対する鍼灸治療の症例(その他の症例における黄斑変性のアムスラーチャート)

患者 60代 男性
初診 X年7月
主訴 視力低下・変視

現病歴 X−1年12月頃、左右のピントがずれているような感覚を自覚し、左眼だけで物を見たところ、形が歪んで見えた。そのまま放置しておいたが、改善しないため、X年3月に眼科を受診。加齢黄斑変性と診断され、ブロムフェナクナトリウム(商品名ブロナック)点眼薬を処方される。また、主治医からは、改善が認められない場合、ラビニズマブ(商品名ルセンティス)の眼内注射を検討していると言われた。同年7月、千秋針灸院を受診し、当院を紹介され来院。

現症 
  矯正視力 左0.7 右1.2
  アムスラーチャートにて、変視が認められた
  小さな新生血管が1か所あると眼科医から指摘されている
  OCTにて、左眼黄斑部浮腫が認められた

経過
 当院にて1週間に1回の頻度で治療を行っていった。アムスラーチャートにて変視の経過を記録したものを図1に示した。鍼灸治療前の格子線の歪みの範囲や、線がぼやけて見える部分が、治療を重ねるごとに小さくなり、37診目には中心部のわずかな範囲だけになった。また、変視の縮小と併せて、視力の改善も認められた(図2)。治療前の左眼矯正視力が0.7であったのに対し、治療開始後3か月で1.0まで改善、9か月後も維持している。また、健側である右眼の視力も、1.0から1.5にまで上昇していることが確認できた。さらに、治療開始後、約8週目ごろに眼科を受診し、OCTによる網膜黄斑部の断面図を確認したところ、黄斑部の隆起が減少していることを主治医から指摘され、この結果により、当初予定されていたラビニズマブ(商品名ルセンティス)の眼内注射は見送られることになった。

考察
 本症例には眼科にてブロムフェナクナトリウム(商品名ブロナック)点眼薬が処方されている。ブロムフェナクナトリウムは非ステロイド性抗炎症薬であるが、主に外眼・前眼部の炎症性疾患の対症療法を目的に使用されることが多い。また、点眼薬は眼底まで届くことはないことから、本症例の主訴の改善への関与は極めて小さく、鍼治療によって視力低下や変視が改善されたものと考えられた。鍼灸の基礎的研究においては、鍼刺激による網膜血流の増加が示唆されおり、本症例の主訴の改善にも同様のことが関与しているものと思われた。その後、2週間に1度の頻度で継続治療をし、その間も視力は1.0以上を維持、変視もほとんど自覚することはない。さらに、眼科での定期検査で、OCTで確認された黄斑部の隆起も減少し続けていることが確認されている。加齢黄斑変性に対する鍼灸治療は、主訴の改善・再発防止の一助となっているものと考えられた。


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秋英堂の名前の由来

治療院名となっている「秋英」とは秋桜、コスモスの中国語名の1つです。花言葉の1つに「調和」ということばがあります。
からだとこころの調和、ひとと自然との調和、ひと同志の調和を目指した治療院にしたいという思いから、「秋英堂(しゅうえいどう)治療院」と名付けました。