糖尿病網膜症に対する鍼灸治療の目的

糖尿病の本体は血管障害であり、初期においては血糖値の異常以外に自覚症状がなく、血糖値の異常だけでは病識を持ちにくいかもしれません。そのため早期から治療を受けずに無治療のまま過ごしてしまい、進行して合併症が発症した段階で治療が開始するケースも珍しくありません。
合併症には「網膜症」「腎症」「神経障害」が3大合併症として有名ですが、秋英堂治療院では糖尿病網膜症に対しての鍼灸治療を行い、視機能の改善・維持に努めています。
2013年の視覚障害において、糖尿病網膜症は緑内障に次いで2番目に多い原疾患となっています。(図1:視覚障害の原疾患の推移、糖尿病合併症最前線 SEASONAL Post 2013年Vol.5 No.3 秋号より抜粋)1991年から順位は下がってはいるものの、依然として頻度の高い疾患であることに違いはありません。
糖尿病網膜症は眼の中の状態によって「単純網膜症」→「前増殖網膜症」→「増殖網膜症」と段階を経ていきます。単純網膜症や前増殖網膜症においては自覚症状がないことが多く病気の進行に気がつかないほどです。増殖網膜症になって出血や網膜剥離などを起こして視野に異常を感じたりして眼科を受診し、そこで初めて糖尿病と診断され治療を開始したという患者さんを何人も診てくると、改めて糖尿病の早期発見・治療の重症性を認識させられます。
さて、糖尿病網膜症の現代医学的な治療の全体像と、その中でどのような目的で鍼灸治療を行っているかを 下の図にまとめました。(画像をクリックすると拡大表示されます)

糖尿病全体の治療の目標は血糖を良好にコントロールすることであり、各種合併症治療下においても内科的治療は不可欠です。糖尿病網膜症の治療において重要なのは眼科と内科とがお互いに患者さんの情報を共有し、適切な治療を行うことと言えるでしょう。内科的な血糖コントロールを基盤に、眼科では眼の状態に応じてレーザー治療や抗血管新生薬(抗VEGF薬)、ステロイド、硝子体手術などを通じて患者さんの視機能の維持を図ります。

網膜症をはじめ、糖尿病に対する鍼灸治療の考え方はわかりやすく言うと「血流の改善」です。糖尿病では血管障害による血流改善が各種合併症やそれに伴う症状などを引き起こしてきます。鍼灸によって血流を改善し、末梢組織に十分な酸素や栄養素を運搬させることによって糖尿病の進行を抑え、合併症の発症を予防することを治療の目標としています。

網膜症には最初に述べたように進行過程によって単純網膜症、前増殖網膜症、増殖網膜症の3つに分けられています。自覚症状もなく進行度もまだ軽度な単純網膜症の段階から治療を開始するのが理想ではあるのですが、症状のない状態で鍼灸治療を受けようと考えるのはやはり難しいと思います。そのためでもあるのですが、当院に来院される患者さんの全てが増殖網膜症で眼底や硝子体の出血を引き起こし、視力や視野に障害を抱えた状態で来られます。

血流の改善(漢方的には「活血」という考え方)を基盤にして、鍼灸治療の目的は大きく以下の3つに分けられます。

@出血の吸収を促進し、視機能の改善を図ること。

A血管壁の強化を図り、新たな出血を予防すること。

B再発の予防、視機能を維持させること。



このうち治療開始時は@とAに力を入れ、出血が吸収されて視野障害が改善し、新たな出血がないことを一定期間確認できたらBに移行していく形をとっています。眼底血を起こすと患者さんは「視界に黒い塊が覆いかぶさって見える」、「糸くずや藻のようなものが視界に散らばって見える」ということをおっしゃります。さらに出血が硝子体に及ぶと「視界が白く濁ったり、時に濁りが薄くなったり」と訴えます。

眼底出血は比較的吸収速度が速く、治療を開始すると視界の黒い塊や糸くずが小さくなったり、数が少なくなっていくのが感じられやすい一方、硝子体出血はいわばゼリー状の液体の中に血液成分が入り込んでいるぶん、吸収されるのが遅く、出血量にもよりますが一般的には早くても3か月はかかると言われています。ただ、それでも鍼灸治療を行うことで吸収が早まる傾向はあり、視界の濁りが薄皮を剥ぐように改善していきます。 硝子体内に血液が長期間残存していると、血液中の鉄分の影響で網膜の機能が低下し、その結果血液が吸収されても視力は回復しにくくなることもあります。そのような理由から、できるだけ早く硝子体出血を吸収させる必要があるのです。

















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秋英堂の名前の由来

治療院名となっている「秋英」とは秋桜、コスモスの中国語名の1つです。花言葉の1つに「調和」ということばがあります。
からだとこころの調和、ひとと自然との調和、ひと同志の調和を目指した治療院にしたいという思いから、「秋英堂(しゅうえいどう)治療院」と名付けました。