秋英堂治療院

網膜静脈閉塞症とは

網膜静脈分枝閉塞症は糖尿病網膜症と並んで最も一般的な網膜血管病変の1つで、比較的視力予後の良好な疾患です。 しかし、新生血管や網膜剥離などの合併症を発症した場合は失明に至る可能性もあるため注意が必要となります。

①疾患概念
網膜静脈分枝閉塞症は網膜静脈が閉塞することで発症し、網膜出血を生じます。 網膜血管は動脈と静脈が並んで走行していますが、その動脈と静脈が交差する部分で閉塞することが多いです。 40歳以上の有病率は約2%と報告されていて、リスクファクターとして加齢・喫煙・糖尿病・脂質異常症・高血圧などが挙げられます。

②主要症状・合併症
末梢部位での閉塞の場合は無症状で気がつかないこともあります。黄斑部に浮腫を合併した場合は視力低下や変視症(物が歪んで見える)が生じます。 重要な合併症は黄斑浮腫と血管新生である。黄斑浮腫は半数以上で認められ、網膜静脈分枝閉塞による視力低下の最も重要な原因となっている。 血管新生は視神経乳頭、網膜に生じ、網膜中心静脈閉塞症のように前眼部に生じることは稀ですが、血管新生が生じた場合、約60%に硝子体出血が起こると報告されています。

③治療
BRVOの主要な治療目的は黄斑浮腫と血管新生に対するものとなります。治療法は光凝固、硝子体手術、抗血管新生薬の3つに分けられます。

a) 光凝固
網膜毛細血管閉塞領域を同定し光凝固を行う。これにより新生血管の発生率を約40%から20%に抑えられると言われている。 一方、黄斑浮腫に対しては黄斑部への光凝固により絶対暗点が生じることもあるため、抗血管新生薬が使用されるようになってからは第一選択として行われることは少ない。

b) 硝子体手術
 新生血管からの硝子体出血や増殖膜による網膜剥離に対して、さらには黄斑浮腫の軽減を目的として行われている。

c) 抗血管新生薬
 日本では2013年にラニビズマブ(商品名:ルセンティス)が承認されている。海外の研究で抗血管新生薬による治療は長期的に視力を維持し、投与回数も年々減少していくことが示されている。現在、抗血管新生薬の硝子体内投与は最も視力改善ができる治療であり、第一選択の治療法であると考えられている。現在はアフリベルセプト(商品名:アイリーア)が用いられている。

網膜静脈閉塞症と鍼灸治療

当院に来院される患者さんの多くは分枝閉塞症で、視力低下や変視症(物が歪んで見える)などを主訴としています。

中医学では網膜血管の閉塞による視機能異常を「目衄暴盲」≪臨床必読≫、あるいは「絡阻暴盲」「絡瘀暴盲」の呼び名があります。

BRVOの病態は静脈の閉塞、血管新生を呈するものであり、中医学的には「瘀血」として捉えることができます。

ただし瘀血は外傷や喫煙などを除けば二次的病理であるため、治療においては必ず一次病理を見極め、それに対する治療も併せて行うことが再発を防ぐうえで重要です。活血だけでは対症療法に留まり、再発のリスクが高まると考えられます。

網膜静脈分枝閉塞症の弁病論治について下の表にまとめてみました。