秋英堂治療院

網膜色素変性と鍼灸治療

網膜色素変性の概要

網膜色素変性に対する鍼灸治療の目的

鍼灸治療の症例

日常生活で気をつけるべきこと~網膜色素変性の視野狭窄を抑制するうえで~

網膜色素変性の概要

網膜色素変性は、視細胞の遺伝子の突然変異により生じる難治性の眼疾患です。遺伝性の眼疾患で、進行は極めてゆっくりです。視細胞および網膜色素上皮細胞に広範な変性が認められます。本邦では4000~8000人に1人の割合で発症し、視覚障害の原因疾患の第3位に位置します。

典型例では10~20歳代にまず夜盲を自覚し、続いて徐々に周辺視野が障害され、視野狭窄が進行し、最終的に中心視力の低下から完全な失明に至ります。

一般的には症状の進行は非常にゆっくりで、発症から失明に至るまでには数十年かかります。進行速度には個人差があり、幼少期にすでに発症している重症の場合では30~40歳代のうちに失明してしまうこともありますが、80歳になっても中心視力を保っている人もいます。

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網膜色素変性に対する鍼灸治療の目的

網膜色素変性は指定難病のひとつであり、西洋医学的においては確実な治療法がなく、完治の難しい眼疾患のひとつです。鍼灸治療においても完治をさせることは難しく、視野狭窄の進行をできる限り遅らせることが治療の目的となります。

また、網膜色素変性の患者さんからは、体調によって見易さが変化するとよく言われます。現状の視機能を維持するだけでなく、日々の視機能をできるだけ良好に維持するために鍼灸で体調を整えておくことが、網膜色素変性の患者さんのQOLの維持にも繋がっていると実感しています。

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鍼灸治療の症例

患者:30代男性 会社員
主訴:網膜色素変性による視野狭窄、夜盲
初診:X年月

現病歴
中学~高校時代は階段で躓くことが多かった。
22歳の時、大学入学のために健康診断で眼科を受診したところ、眼底の異常所見を指摘され、精査の結果、網膜色素変性と診断された。
X-7年前より別の眼科にて漢方薬(小柴胡湯、桂枝茯苓丸)とへレエニン錠(アダプチノール®)、イソプロピルウノプロストン(レスキュラ®)を処方される。
愛知県一宮市の千秋針灸院より紹介を受け鍼灸治療を開始。当初は視野と視力を千秋針灸院にて数か月ごとに1年間測定。その後は当院にて視野を断続的に測定した。
視野狭窄の進行を抑制し、現存する視機能の維持を目的に、X年月、愛知県一宮市の千秋針灸院より紹介を受け来院。

鍼灸治療前後における視力、視野の継時的変化

網膜色素変性30代男性症例視力 網膜色素変性30代男性症例視野

鍼灸治療開始前の視力は左眼0.7、右眼0.6でしたが、週2回の頻度で3か月間鍼灸治療を行ったところ、左眼1.2、右眼0.9にまで上昇しました。その後、治療頻度を減らしていっても視力は左眼1.0、右眼0.9で維持していくことができました。
また、鈴木式アイチェックチャート上の視野の状態は、治療開始前は中心付近に輪状の感度低下部位がありましたが、治療開始から3か月後には視野の拡大が認められ、1年後は輪状の感度低下部位も消失。視野は若干縮小したものの、初診時よりは拡大した状態で4年後も維持されていました。

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日常生活で気をつけるべきこと~網膜色素変性の視野狭窄進行を抑制するために~

一般的に網膜色素変性の視野狭窄は極めてゆっくりですが、これまで診てきた網膜色素変性の患者さんの中には視野狭窄が急速に進行したケースがあります。
そのような患者さんにお話を聞いてみると、日常生活のなかである共通点が見受けられました。それは・・・
「睡眠不足」です。

特に男性で40歳前後のかたに多く見られました。詳しく訊いてみると、会社で中間管理職となり、仕事量が激増し、睡眠時間を削らなければならなくなってしまったと・・・

睡眠とは、日中に消耗した体力を回復したり、傷ついた組織を修復するために重要な時間です。特に女性は睡眠の重要性を体感しやすいと思います。例えば睡眠不足が続くと「お化粧の乗りが悪い」「髪がパサつく、枝毛が増える、切れやすくなる」といったトラブルが増えてきます。

これは睡眠によって栄養され修復されるはずの組織が、睡眠不足によって組織の修復が遅れ、組織が脆弱化した結果生じるものです。網膜色素変性においても視細胞のダメージが進みやすくなり視野狭窄の進行が早まるものと考えられます。

鍼灸治療に加えて日常生活では睡眠を十分にとり、体力の回復や組織の修復を促すことを意識していただくことが視機能の維持にとても重要です。

睡眠についてはもうひとつ大事なことがあります。就寝時間です。同じ7時間睡眠でも、1時~8時の睡眠と、23時~6時の睡眠では後者のほうが睡眠の質は遥かに高くなります。網膜色素変性の患者さんにいつもお伝えするのは「できる限り午前様にならないようにね」ということです。就寝時間が早い患者さんのほうが視機能を維持できている傾向があります。

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