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はり・きゅう専門秋英堂治療院
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クッシング症候群について
クッシング症候群について述べる前に、まず副腎皮質ホルモンの分泌が体の中でどのように調節され、作用しているかについて、簡単に説明したいと思います。
右図(クリックすると拡大)は副腎皮質ホルモンのうち、主にコルチゾールと呼ばれるホルモンの調節と、作用について簡単に図式化したものです。
副腎皮質ホルモンが分泌されるには、まず最初に視床下部で、副腎皮質ホルモン放出ホルモン(CRH)が分泌される必要があります。
CRHは、下垂体に作用して、そこから副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)の分泌を促します。
下垂体から分泌したACTHは、血液に乗って副腎皮質に達し、副腎皮質を刺激して、副腎皮質ホルモンを分泌させます。副腎皮質から分泌したホルモンは、体の各組織に働きかけ、実に多くの作用を引き起こします。
■クッシング症候群の概念
副腎皮質ホルモンのうち、主にコルチゾールが慢性的に過剰分泌された結果、様々な症状を呈したものをクッシング症候群といいます。好発年齢は30〜40歳、男女比は1:4と、圧倒的に女性に多いのが特徴です。
■発症の原因
@クッシング病
下垂体腺腫からのACTH分泌が過剰となり、二次的にコルチゾールが慢性的に過剰分泌されることによって起こるもの。
A副腎
皮質腫瘍
腺腫や癌など、副腎皮質の腫瘍そのものからコルチゾールが過剰に分泌されることで生じるもの。
B異所性ACTH産生腫瘍
下垂体以外の場所、例えば肺癌(小細胞癌)、膵癌などの悪性腫瘍や、カルチノイドからのACTH様作用をもった物質が分泌され、それが副腎皮質に働いてコルチゾールの分泌を高めるために起こるもの。
C医原性
例)副腎皮質ステロイドの長期投与によるもの
■症状
@コルチゾール過剰による症状
○肥満
からだがブドウ糖を利用できる時、コルチゾールは脂肪合成を促す方向で働くため。
体幹・頚・背中などを中心に脂肪の沈着が見られます。(満月用顔貌・中心性肥満)
○糖尿病
コルチゾールは血糖を上げるように働き、インスリンと拮抗する作用があるため。
○皮膚線条、筋力低下
コルチゾールによるタンパク異化作用により筋肉のタンパク質が分解されるため、筋力低下が起こります。
皮下線条とは、皮膚の表面に見られる肉割れのようなヒダのことです。脂肪が急激に沈着することによって皮下組織が
伸展し、断裂することによって生じます。妊娠線のようなものです。
○出血性素因、浮腫
タンパク異化作用によって血管内皮のタンパク質が減少し、毛細血管壁が断裂しやすくなるため、皮下出血や浮腫を生
じます。
○高血圧
コルチゾールは血管内皮のカテコラミン・アンギオテンシンに対する感受性を高める働きがあり、これが高血圧を引き
起こす原因の1つとされています。この場合は、収縮期・拡張期ともに上昇します。
○骨粗しょう症
コルチゾールはビタミンDと拮抗するように働き、また、腎尿細管からのカルシウム再吸収を抑制するために、骨への
カルシウム沈着が抑制されて骨密度が減少します。さらに、尿中のカルシウムも増加するので、尿路結石も生じやすくな
ります。
○精神障害
コルチゾールの神経系に対する働きのため、感情の不安定や抑うつなどが見られます。
○易感染性
免疫機能の低下によるものです。
○性腺機能低下
男性:ED(勃起不全)や造精機能の低下
女性:無月経
A男性ホルモン過剰による症状
○デヒドロエピアンドロステロン(DHEA)の過剰分泌→多毛・無月経・不妊症
BACTH過剰による症状
○皮膚色素沈着
■検査所見
@一般検査
○好中球増加、リンパ球・好酸球減少
糖質コルチコイドには、好中球を増加させ、リンパ球・好酸球を減少させる性質があります。特に、好酸球は正常時でも
かなり少ないものなので、これが減少すると、0に近くなります。
○低カリウム血症
鉱質コルチコイドの作用が強く強まるために、腎遠位尿細管でのナトリウム再吸収とカリウムの分泌が亢進して、高ナト
リウム血症、低カリウム血症となります。
A内分泌学的検査
○血漿コルチゾールの増加
コルチゾール値は、正常では朝高く、夜中に低くくなるという日内変動があります。クッシング症候群ではこの日内変動
が消失します。0時のコルチゾール値が5μg/dl以上の時は、クッシング症候群が強く疑われます。
○尿中17-OHCSの増加
17-OHCSはコルチゾールの主な代謝物で、尿中に排泄されます。コルチゾールが増加すれば、尿中17-OHCSも増加して
きます。
○デキサメサゾン少量抑制試験
デキサメサゾンは下垂体からのACTHの分泌を抑制する作用があります。これを少量投与すると、正常では血中コルチゾ
ールやACTHは低下します。一方、デキサメサゾン投与で血中コルチゾールが低下しない場合、クッシング症候群の可能性
があります。
デキサメサゾンは夜11時に1r服用し、翌朝の血清コルチゾールを測定します。5μg/dlであれば陽性です。
B放射線医学的検査
○トルコ鞍の異常
下垂体腺腫などが原因で起こるクッシング病の場合、トルコ鞍に異常が見られることがあるので、この場合は頭部MRI検
査が有用です。
○腹部CT
副腎皮質の腫大がみられます。
※両側→クッシング病、異所性ACTH産生腫瘍
※片側→副腎皮質腫瘍(腺腫・癌)
○ヨウ化メチルノルコレステロール(131I)投与による副腎シンチグラフィ
ヨウ化メチルノルコレステロール(131I)はコレステロールと同じように副腎に取り込まれ、ステロイドを作る材料にな
ります。したがって、131Iでラベルしておけば、副腎皮質に集積して副腎を写しだすことが可能となります。
※両側→クッシング病、異所性ACTH産生腫瘍
※片側→副腎皮質腫瘍(腺腫・癌)
■鑑別
右図は、クッシング症候群あるいはクッシング病が疑われる場合の鑑別手順について示したものです。(クリックすると拡大します)。
各種検査は、下垂体や副腎皮質、あるいはそれ以外の場所が原因であるかどうかを見極め、それに準じた治療を行うための、とても重要な検査となっています。
参考文献
○新病態生理できった内科学4 内分泌疾患 第3版 医学教育出版社 2012年